人と動物のコラム

[2007年10月]

猫と人の関係


Photo by Tadahiro Tonomura

1992年に留守宅を訪問して猫の世話をするキャットシッターサービスを立ち上げ、足掛け16年で4万匹以上の猫とその家族、環境を見てきました。現場にいると、猫に対する考え方や環境がここ数年で、大きく変化してきたのがわかります。外出自由から完全室内飼いに、不妊手術やワクチン接種の一般化、キャットフードも安全で栄養バランスを考慮するメーカーが増え、また意識面ではペットではなく家族としての位置づけが定着してきました。
実は開業当初、クライアントから「私たちが死んだら残された猫の面倒を見てほしい」というリクエストがあり、私自身その言葉に驚いたものでした。しかし、現在「家族であり愛猫の将来を守りたい」という願いを持つ人は少なからずいます。

2002年に入院や死亡の際、生前契約によって残された猫を引き受ける「猫の森」システムを立ち上げて以来、すでに10匹以上の猫を受け入れてきました。さまざまな事情で「猫の森」にやってくる人と猫たち。ガンを宣告された余命1ヶ月の女性、家庭内暴力から逃れ、シェルターに入居するため猫を預けにきた母子、亡くなった母の遺言で猫を頼みにきた娘夫婦、子どものいない老夫婦などなど、すべてがひとつひとつのドラマのようです。
背景はまったく違いますが、その人たちの猫への思いは共通しています。また、そのように愛されている猫は、人間を信頼しているので、「猫の森」に住むようになってもやっかいを起こすようなことがありません。どんな猫も健気に新しい環境になじんでくれるのです。そんな姿を見ていると、私たち人間はもっと謙虚に、猫から學んだ方がいいように思います。

ホームページで猫に関する相談を受けたり、アドバイスやカウンセリングなどをしたりしていると、猫の問題行動の原因は、相談者自身の考え方や生活態度に関わっていることが多いように感じます。特に多いのは、まだ起こってもいないことで悩んだり、不安になったりする心配性の人たちです。
「今できることを一生懸命やれば、なんとかなりますよ」
「大丈夫、大丈夫、心配いりませんよ」
話を聞いて、ちょっと励ましたり、「あなたはどうするといいと思いますか?」と答えを引き出すようにしたりすると、たいていの人は自分で答えを見つけて納得します。
しかし一方で、自分で考えて行動してみるという行動パターンを持たない人は、何度でも同じような質問を繰り返す傾向があります。飼い主でありながら、自分で責任を取りたくないという意識が見られます。こんな人と動物が暮らすと、過度のストレスから原因不明のハゲになったり、トイレ以外にそそうをしたりという症状になって出てくるのですが、飼い主は自分が原因になっていることに気づきません。

特に猫は本来自立しており、プライドも高く、プライバシーも確保したい動物です。それを理解せず、過干渉、過保護にしている人も多いのが現状です。例えば「猫がいるから旅行に行けないわ」という方がいますが、猫だってたまには家族と離れて息抜きしたいのではないでしょうか?「猫が寂しがるんじゃないかしら?」と言って出かけていった家族の心配をよそに、キャットシッティングに行ってみると、そこの猫たちはリラックスしてのんびりしている場合が実に多いものです。そのことをレポートすると、「私がいなくても平気なのね」とがっかりされる方もいます。また「ならば、これからもっと出かけましょう」となる方もいます。いずれにしても、新しい行動をきっかけに猫も人も心の免疫力を高められたら、これに超したことはありません。
猫という動物の習性を理解し、猫の個性を尊重し、人と猫がお互いに快適な暮らしをする。そのためには、「猫がいるから○○できない」という考え方ではなく、「自分が好きなことをして、なおかつ猫にも安全で快適な暮らしを提供する。そのためにはどうしたらいいか?」と考えてはどうでしょう? いっしょに暮らす人が常に精神的な負担を負っていると、デリケートな猫はその気配を察し、マイナスのエネルギーを無意識に吸収してしまいがちです。
猫のためにも、自分のためにも、したいことをするのが一番です。わがままと言われようが、気まぐれと言われようが、愛されてしまう猫を見習ってしまいましょう。

猫の森(http://www.catsitter.jp/neko_mori/nekomori.html
CSなんり(http://www.catsitter.jp/index.html

猫の森株式会社 代表取締役:南里秀子

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