人と動物のコラム

[2009年4月]

人と人を繋ぐ聴導犬

聴導犬が日本で誕生してから約25年。音に反応する便利なペットから、聴覚障がい者の体の一部であり、なくてはならない存在へと変化してきました。
2002年、身体障害者補助犬法(以下:補助犬法)が施行され、聴導犬は聴覚障がい者ユーザーと共に、社会参加することができるようになりました。買い物やレストランで食事をする、仕事や旅行に出かけるために公共交通機関を利用するなど、あらゆる場面に同伴することが許可されました。そのため、日常生活の中の音情報を伝えるだけではなくなったのです。

聴覚障がい者は、視覚障がい者や手足に障がいを抱えている人と比べ、障害を持っていることに気が付いてもらえなかったり、理解してもらえなかったりします。そのため、外出中に他の人と話をする際、毎回「聞こえないので・・・」と相手に伝える作業を行わなければならないのです。しかし、聴導犬と共に外出していれば、「聴導犬=耳の聞こえない人をサポートしている」と相手が理解し、的確な方法で情報を伝えてくれるようになるのです。聴覚障がい者が抱えているコミュニケーション問題も、同伴しているだけで解決され、安心感のある外出ができるようになってきました。
また、今までわからなかった情報も、聴導犬と一緒に居ることで、知ることができるようになりました。公共交通機関を利用していると、「電車が遅れます」や、「トラブルがあり折り返し運転になります」などの情報があると思います。聞こえなければ理解できないことも、周囲の人が必要だと感じ、聴導犬が伝えることのできない情報を運んできてくれるのです。このような経験は、ユーザー自身が度々直面していて、聴導犬と共に社会参加することへの自信へと繋がっているのです。

そして、私達訓練事業者も、聴導犬を通してユーザーや希望者と様々なことで繋がっています。
近年、聴導犬のニーズは、多様化してきました。多様化することができたのは、ユーザーの経験と助言があったからです。

2頭目の新しい聴導犬と生活をしているユーザーさんから、「冷蔵庫からも音が出るのね」と言われたことがあります。『音を探す』ことを基本概念として訓練されたその聴導犬は、今までのように決められた音に反応するだけではなく、目新しい音にも反応するようになっていました。聴導犬が不思議そうに首を傾け、冷蔵庫の前に・・・。その様子を見て、冷蔵庫の扉が少し開いたままになっていることに、気が付いたそうです。そして、その経験を私達に話してくれました。こうして、新たな聴導犬のニーズができ、希望者に仕事として紹介することができるのです。

このように、ユーザーが経験したことが、希望者にとって聴導犬の必要性と有効性を強く感じさせることに繋がり、聴導犬と共に生活することへの希望へと繋がっていくのです。また、私達が次の聴導犬に教えるための訓練技術の開発へと結びついていくのです。

今回、「人と人とを繋げる聴導犬」というタイトルで、聴導犬を中心に人が繋がっていることを書かせていただきました。ユーザーやユーザーと出会った人、聴導犬を希望している人だけではなく、この記事を読んでくださった方も、聴導犬を通して私達と繋がったと思っております。聴導犬の認知度は、他の補助犬と比べると、まだまだ低いのが現状です。これを読んでいただいたことをきっかけに、聴導犬という耳の聞こえない人をサポートしている犬の存在を知っていただき、聴導犬と聴覚障がい者の社会参加にご理解とご協力いただきたいと思います。


特定非営利活動法人 聴導犬普及協会(http://www.hearingdogjp.org/

特定非営利活動法人 聴導犬普及協会 訓練部:水越みゆき

このページのトップへ