人と動物のコラム

[2009年5月]

動物愛護・保護・福祉から
~動物との共生を考える3つの事例

文化国家の我が日本では、動物との関わりの中に、改めるべき理不尽な動物の取り扱いが現存しています。今回はその中で3事例を紹介したいと思いますので、皆さんも考えてみて下さい。


(社)日本動物福祉協会提供

事例1 闘犬
先進諸国は、闘犬は最も動物福祉に反するものとして禁止しています。我が国の自治体でも、東京都、神奈川県、石川県、福井県では条例で闘犬を禁止し、北海道は土佐犬以外の闘犬を禁止しているのですが、国の法律ではこれを禁止していません。そのため観光の目玉として常設闘犬用リンク(土俵?)を備えた観光施設まで作っている高知県(桂浜)のような自治体もあります。ここでは神社境内等に特設闘犬用リンクをしつらえ、神社への奉納闘犬なども行われています。
闘犬は、互いに100%相手に咬傷を負わせ、裂傷に伴う出血で、あたり一面に血が飛び散ることになります。最近では、ピットブルなどの土佐犬以外の犬種でも行われています。
この闘犬が人を襲う事件がいくつもあることはご存知でしょうか。昨年6月、福岡県遠賀郡水巻町で土佐犬の飼い主が咬み殺され、助けようとした3人も重軽傷を負いました。昨年10月には大阪府松原市で土佐犬に小学3年生と郵便局員が襲われ、今年の1月にも、愛知県稲沢市で、民家の飼い犬をかみ殺し散歩中の人を襲うなどしたため、闘犬が警察官に射殺されるという事件が起きています。
愛護動物の犬を危険な特定動物化することは許されることではないので、動物愛護管理法に動物を闘わせることの禁止条項の制定を求めたいと考えています。

事例2 馬虐待神事
乗馬経験がない16~20歳の青少年が、たった一か月間の乗馬の稽古で、走路に設えた登り坂(斜度30度)上の2mの垂直壁を駈け上がらせる、というむちゃくちゃな神事があります。これは三重県の多度大社と猪名部神社の上げ馬神事で、何百年も前から行われ三重県の無形民俗文化財に指定されています。
神事関係者による馬の扱いが極めて乱暴で、ドーピングや過度の暴力と威嚇等様々な方法で馬を興奮させ狂奔させていました。この虐待的行為の指摘と動物愛護管理法の改正で少しは改善しましたが、最近では馬への暴力が警察や三重県職員がいる中で恣意的に行われ、悪化しています。
この神事は、騎手以外の人間によって馬を興奮させ爆走させるため、騎手のみならず爆走馬を抑える役割の青少年達が事故に巻き込まれる恐れがあります。現に、昨年は見物客を含む5人が重軽傷を負いました。今年の猪名部神社では、主催者側の一人が馬に蹴られて頭蓋骨を骨折し重傷を負っています。昨年は、1頭の馬が鼻骨骨折で大量出血し、今年は2頭の馬が前肢骨折して廃用馬となり殺処分されました。神事に使われる馬が哀れでなりません。
人馬の安全のために、馬への暴力をなくし、垂直壁を低くし傾斜も付けるよう望みます。また、伝統を重んじるというなら、在来馬の木曽馬や道産子を使うべきかと思います。

事例3 観光地宮島の鹿
広島県の観光地、安芸の宮島の厳島神社周辺にいる鹿達が危機に陥っています。近年、過剰頭数や餌不足で観光客に危害を加えるなどから、シカ煎餅販売と餌やりを禁止しました。「鹿は野性動物だから、餌を与えなければ山に帰るので、その場からいなくなる」との有識者の意見により決定されたものです。
しかし、宮島の鹿は長年にわたり餌付けされ"家畜化"されたもので、自由放牧の状態に置かれているだけで野生動物とは言えません。その場で生まれ育った鹿なので山に帰るはずもなく、宮島の山には常緑樹に覆われ餌となる下草が殆どないことから、山に移住するとは到底考えられません。現に、山に移住した鹿は殆どいないと聞いています。
今や栄養失調で痩せ細り、被毛が薄く光沢もない状態です。斃死した鹿の胃内は、ビニールなどの異物で満たされていたといいます。見かねた人達が餌を運んで与えていますが、頭数が多いために十分ではありません。
人為的に適正頭数に制限して管理し、絵となる美しい鹿(神鹿)となるよう望みます。

以上が3つの事例ですが、いかがでしたでしょうか。
これ以外に、食の安全・安心のために農場動物(畜産動物)の5つの自由に基づく福祉(アニマルウエルフェア)と実験動物と動物実験についても記したいのですが、紙面の都合でまたの機会にさせていただきます。

動物との共生を考える連絡会(http://dokyoren.web.fc2.com/

動物との共生を考える連絡会 代表 獣医師:青木貢一

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