人と動物の関係学

[2010年3月] アニマル・セラピー #01

アニマル・セラピーに必要なことを知っていますか?

アニマル・セラピーのひとつ「AAA」と「AAT」

 最近、有料で犬などを老人ホームに連れて行き、アニマル・アシステッド・アクティビティ(AAA/動物介在活動)を提供する業者がちらほらと出てきました。アニマル・アシステッド・アクティビティとはアニマル・セラピーの一種で、この他にもアニマル・アシステッド・セラピー(AAT/動物介在療法)などの活動があります。(詳しくは「#00 アニマル・セラピーとは」をご覧下さい)
 これらの活動がメディアなどで取り上げられることが多くなって来ましたが、それによって、このような活動の本来の姿がゆがめられてしまわないか心配になることがあります。

 人間の福祉や健康、医療に動物を介在させることは、かなり以前から実施されて来ました。現在確認できるもっとも古い文献は、乗馬を兵士のリハビリに用いていた古代ギリシャ、そしてローマ文明のものになります。さらに9世紀のベルギーでは、動物や植物が人間に良い影響を与えるということが、自然療法として活用されていました。あのナイチンゲールも、小動物を付き添わせることは長く患う病人にとって良いことであると語っています。

 このように歴史ある動物介在活動・療法は、90年代に米国のデルタ協会によって現在に繋がる基盤が作られることになります。それまではリスク管理やボランティアの教育、さらには動物やハンドラーの選別などが、はっきりとしたルールに基づいて行われていたわけではありませんでした。このままではこの分野は発展しない、また大きなリスクを抱え込むことにもなると思ったデルタ協会は、90年代初頭からそれら一つ一つを専門家らに検討してもらい、マニュアルやシステム作りに専念し始めたのです。

アニマル・セラピーとは「幸せな動物と接する」こと

 以前、このペテラスの中でも「原始の血」の説について語りましたが、このデルタ協会が最も大切にすべきだとしたのは「参加動物の福祉」です。動物介在療法に用いられる動物が極めて幸せでなければ、その動物と接する人もまた「良い気持ち」になることはないからです。
 その動物、特に犬、猫、ウサギ等のコンパニオン・アニマルを最も幸せにしてくれるのは、言うまでもなく快適な家庭生活です。自分の家族といつもしっかりとした繋がりを持ち、家の中で清潔な環境を与えられ、許される家庭生活の範囲の中で自由気ままに暮らしていくことが、彼らにとっては最もストレスがなくハッピーな生活なのです。

 このように幸せな動物たちの中から、他人との接触に適した性質のもののみが、時々訪問活動というボランティア活動に参加することがアニマル・セラピーの理想です。おそらく、自分の動物たちと幸せに暮らしている飼い主の方々なら、このことを最もよく理解しておられると思います。

「動物が訪問する」だけではアニマル・セラピーとは言えません

 さて、話は有料の訪問活動に戻します。
 その活動をされている方々がどのような目的、システム等で活動されているのかはわかりませんが、活動動物たちはみな、幸せな家庭で飼育されているのでしょうか?もしケージなどで飼育されているとしたら、そこから動物の生活上の「幸せ」がすでに侵害されてしまってはいないのでしょうか?
 また、それらの動物には飼い主や家族はいるのでしょうか?もしそうではないとしたら、活動に同伴する人間が心の底から「その動物を守らなければ」という信念を本当に持っているのでしょうか?少なくともテレビやふれあいなどで目にする動物たちには「ちょっと待ったー!」と言ってくれる代弁者がいないように見えるのですが・・・。
 更にこれらの動物たちを提供している方々は、どのようなリスク管理を行っているのでしょうか?

 デルタ協会のボランティア研修マニュアルは、まず、人間の勉強に用いられるものです。動物の訓練や適性の評価の前に、医療施設や教育施設などに入ることは一体どのようなことなのかを、人間側が勉強するのは当たり前のことです。守秘義務に始まり、いろいろな倫理的、実質的ルールを学ばなければなりません。また、人とのコミュニケーション技術も勉強しなければなりません。このような要素を頭に入れ、現場を組み立てていく勉強を希望する学生のために、3年制の学科があります。押さえておかなければいけない情報を学ぶために、少なくとも3年は必要となるのです。

動物たちのパワーを手に入れるために必要な力を持っていますか?

 動物は、時に奇跡としか思えぬような現象を引き起こします。彼らのパワーには常に感心させられます。しかしそれは、決して手軽に手に入るものではありません。またそれは派手なものでもありません。地道な努力、本当にやりたいという気持ち、正しい情報を手に入れる意欲等が必要なのです。
 そして何にもまして、自分の大切な家族である動物と意味のあるボランティア活動をするためのパートナーシップを、切磋琢磨しよう、したい、できる、という人間がいて、初めて動物介在活動・療法は成功を収めることができるのです。

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