人と動物の関係学

[2012年4月] アニマル・セラピー #03

セラピー犬ってなあに?

セラピー犬は法律で定義されている犬ではありません

これはよく耳にする言葉ですね。。。。セラピー犬。この犬は一体どのような犬なのでしょう?残念なことにセラピー犬は盲導犬、聴導犬、介助犬等のように法律で定義されている犬の仕事ではありません。
訪問活動等を飼い主と一緒にやるボランティア犬のことなのです。幸せな家庭犬が、時々飼い主と一緒に病院や施設、学校等を訪問し、レクリエーション、治療、教育等々のお手伝いをする、これがセラピー犬の正体です。

セラピー犬に関する数々の誤解

最近、このセラピー犬に関する数々の誤解があるように思うのです。まずその一つが特定の犬種が向いているという誤解です。確かに様々な犬の種類の間には、性格や活動性等の差はあります。しかしこれはあくまでも一般論であり、特定の犬種の個体がすべて同じ性格的特徴を持っているというわけではありません。
それゆえ、友好的な性格であるラブラドールは向いているが、臆病で警戒心の強い柴犬は向いていない、などということはできないのです。ラブラドールの中にも引っ込み思案なこもいれば、柴犬の中にも外向的で陽気なこもいるのです。活動に向いているか否かは、必ず個体の性格を見なければなりません。
また前述した「法的位置付けがない」という点に関しても色々と誤解があるようです。セラピー犬が医療施設などに入ることができるのは、法的に許されているからではありません。ボランティアである飼い主とその犬が、特定の施設に入る許可をその施設の責任者からもらっているから入ることができるのです。
いわば施設関係者とボランティアの間の「個人契約」によって現場に入ることができるようになっているのです。
これはつまり、セラピー犬は一般にペットが入ることができないところには、やはり入れないということでもあるのです。
少し言い方がややっこしいかもしれませんが、これはとても重要な点なのです。「うちの犬はA病院の集中治療室まで訪問させてもらっているのだから、レストランでもどこでも入れて当然。」と思ってしまう飼い主さんが時々いるのですが、これは大きな間違いです。
どのように崇高なお仕事に携わっていようとも、どれほど大変な現場に入ることを許可されていようとも、セラピー犬は社会では、法的にペットと同じ扱いです。
犬禁止のマンションでは飼えません、ペット禁止の店舗にも入れません。そんな失礼な・・・。と思われるかもしれませんが、これが現実なのです。
このあたりも訪問ボランティアをする方々は重々理解しておかなければなりません。

セラピー犬の「基本」それは幸せな家庭犬であること

もう一つ少し困った「セラピー犬神話」があります。それは保護犬からセラピー犬になって大活躍・・・。というようなストーリーに起因するものです。
飼い主のいない犬たちに新しい家を探すことは必要であり、とても大切な活動です。これ自体は今後も多くの方々に続けていただきたいと思います。しかしこれをセラピー犬育成と結び付けてしまうのはどうでしょう?セラピーの現場に出ていくことができるかどうかは、個体の性格等の適性で決まってしまうことです。これは保護犬であろうとそうでなかろうとあまり関係がありません。むしろ保護犬の中には過酷な体験をしてきた為に、新しい家族のもとで沢山の「リハビリ」をしてあげなければならないこも多いと思われます。
もちろん過酷な境遇を乗り越え、人々に癒しを届ける仕事ができるようになった、などと言えば、それはそれは世間が大喜びする美しいスト―リーとして大変魅力的なことでしょうし、注目を浴びることは間違いないでしょう。
でも打率としてはあまり高いものではなく、あくまでも特殊なケースとして考えるべきなのではないでしょうか。
それを皆ができる、すべての保護犬に開かれた道であるかのように取り上げてしまうこと自体、大変な誤解を生むことになるのです。
またセラピー犬を目指し、特定犬種を繁殖させる、などということまで最近は語られているようですが、これも困ったものです。セラピー犬は生まれるものではありません。基本的な性格の安定と社会性が育まれるような育成環境、意識の高い飼い主による愛情深い飼養管理、これらが相まって周囲に良い「オーラ」を出すことができる犬が育つのです。そうです、やはり基本は幸せな家庭犬なのです。

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