人と動物の関係学

[2013年3月] アニマル・セラピー #04

アニマルセラピーの乱舞

ファシリティードッグ

最近、動物を人間の医療や福祉の分野で活用しようというトレンドが、世界的にも活発化しています。我が国においてもその傾向が強く表れています。最近ネットのニュースで目にしたのですが、聖マリアンナ医科大学の病院で「常勤犬」ファシリティードッグなるものの導入が検討されているということです。
おそらくこのコラムを読んでおられる方々の中には、自分の愛犬や愛猫と訪問活動などに参加した経験をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。ニュースの文言をみるとこの犬はボランティアが連れてくる訪問活動犬・セラピー犬とは異なり、専門のトレーニングを1年以上受けてから施設に「配属」される犬だそうです。

管理・飼育体制は?

このニュースを目にしたときに少し戸惑いました。
専門のトレーニングとは何であろう?
訪問活動の際には犬よりもボランティア自身の立ち回りの教育の方が大切であると言われているが、ここではそのことはどのように考えられているのであろう?
犬は接触する患者さんのニーズに合わせてその活動体系は常時変化するものであり、専門的訓練とは一体何を指しているのであろう?そしてその専門的訓練は一体だれがするのであろう?
患者さんとの接触は人間の体や心の専門家が何が必要かを提示し、それに合わせて犬の行動管理の専門家が犬にはこのような動きができるが、それで何かができるであろうかと問い返しながら両者の話し合いから磨きあげられていくものであるが、ファシリティードッグを飼う施設では犬の行動管理の専門家を雇うのであろうか?
一般の訪問では犬の飼い主であるボランティアが、犬の健康管理、行動管理、日常のQOLの管理、そして最も大切な福祉の保証をするのであるが、病院で飼われた犬の場合はどこのだれがそれをやるのであろう?
夜間は犬舎に入れて飼うのであろうか?
常勤ということは、24時間体制で必要とあれば患者さんたちとの接触をしなければならないのであろうか?
ボランティアの活動犬は多くの団体では、施設に入る24時間以内にシャンプー、爪切り、歯磨きなどの準備をするというルールがあるが常勤犬はどのようになるのであろう?
考え始めたら後から後から疑問が沢山湧いてきました。私たちの大切な愛犬は24時間体制で私たちの庇護のもとに置かれています。夜中に動物病院に駆け込んだ経験のある飼い主さんも沢山おられるでしょう。ではこれらの犬の場合はだれがそれをやるのでしょうか。一番気になったのは導入を検討する委員会でハンドラーになる職員の人選、衛生・安全面の配慮などが検討されたと書かれていたのですが、犬の福祉面はどのように検討されたのかが全く分からないことでした。どうして飼い主さんたちが手塩にかけて大切に育てている訪問活動犬ではだめなのでしょうか?何故あえて問題が生じる可能性が高い施設内飼育を選ぶのでしょうか?

セラピストとは

もう一つ最近とても驚く場面に遭遇してしまいました。ある私鉄とJRの乗り換え駅のコンコースで「セラピー犬育成募金」活動をしている団体の方々を見てしまいました。まず、一つは育成募金とは何であるか良くわかりませんでした。普通はボランティア活動に自分の動物が向いている性格であると感じた飼い主さんが自分で躾教室に通われたり活動する現場やグループを探したりするものなのではないでしょうか。当然それらの犬は飼い主さんが責任を持って飼養管理をするわけですから「育成資金」等はいらないはずです。
米国の老舗のペットパートナーズ(旧デルタ協会)では、1992年より行われている活動認定を受けるためにはボランティア自身が動物抜きで座学を有料で勉強をしなければなりません。それに加え実技の試験があるのです。その実技の試験はペア認定ですから認定書にはハンドラー名と動物名が明記されており、そのハンドラー以外の人がその動物を連れていくことはルール違反として扱われます。また、ボランティアハンドラーは別途人間を扱うための各種療法士や医師・看護師等の免許を持っていなければ勝手に患者さんに色々なことをやらせてはいけないという厳しいルールもあります。考えてみれば当たり前のことです。すでに国際学会等で動物介在療法・活動という言葉が登場する中でアニマルセラピストという言葉は絶対に使われません。アニマルを活用する人間のセラピスト(療法士)という概念が大切であり人間を触る資格の無い者にそれをさせることは危険であるからなのです。

セラピー犬の福祉

アニマルセラピーとは本来は動物側の人間と人間側の専門家の二人三脚で行われるべき活動なのです。どうもそのあたりが曖昧になってきているように感じているのは、私だけでしょうか。
先ほどの募金活動に戻りますが、私用でその駅を午前11時頃に通った際、コンコースで2頭の大型犬を連れ呼びかけをしている方々を目にしたのですが、用事が終わりその駅に戻ったのは午後4時近くなっていました。何とまだ同じところで募金活動は続けられていました。2月17日東京近郊は寒波に見舞われ冷たい風が吹いている日でした。コンコースはコンクリート、敷物こそ敷いてありましたが、クッション性のあるものではありませんでした。バリケン等も見当たりませんでした。人間の福祉のために動物を使うのであればまず彼等の福祉が最優先されることは、当たり前ではないのですか?

このページのトップへ