人と動物の関係学

[2007年7月] 犬との楽しい生活 #00

犬との楽しい生活

あなたは大丈夫ですか?

 犬は人間の最大の友人である、とよく言われていますが、その友人達との生活の中で、人間はどのような振舞いをしているのでしょうか。そして彼等の目には、それがどのように映っているのでしょうか。

 2007年1月20日に、動物愛護団体の連合体である「動物との共生を考える連絡会」が「良い飼主のチェックリスト」というものを発表しました。その内容を見ると、一見、良い飼主であると思えるような方々でも、実は虐待行為に等しいことを時にはやってしまうことがあるという点が明らかになります。特に愛犬との生活をあらゆる面で楽しんでいる方々が、自らの行動をじっくりと考えてみなければならぬ分野が4つあります。それは食、しつけ、生活、そして社会活動です。

"食" 与えているから良い、とは言えない。

 まず食に関してですが、最近は肥満の問題が犬の世界でもかなりあるようです。動物愛護先進国である英国では、裁判ですでに「過度な肥満は虐待である」という判決が下っている事例もあるほどです。うちの子はケーキ、ドーナッツ、プリンが大好き、そしてかわいい子には大好きなものをあげ、喜ぶ姿を目にしたい——そのような飼主の「心やさしい身勝手さ」が犬の健康をむしばんでゆくのです。時には「おデブちゃん犬」(そして猫も...)がテレビやメディアで取り上げられることがありますが、そのかわいさなどが強調されることはあっても、決してその悲惨さを飼主に自覚させるようなことにはなっていない、ということがしばしばあるようです。自分の子の肥満を自慢するような飼主は良い飼主ではありません。

 また、最近では手作りのフードを犬に与えている方々も増えているようですが、自分で作っているから安心、とは限りません。例えば、毎日ササミとキャベツとニボシを煮ている、というような人もいますが、これでは栄養が偏ってしまいます。食のバランス、バリエーションをしっかりと考えずに「手作り」のみを自慢していても、良い飼主にはなれません。

しつけは平和な生活を送るためのもの

 次にしつけですが、いわゆる服従訓練をしつけと同一視してしまっている愛犬家がいるようです。しつけは、犬も人間も互いに困らずに、平和な生活をおくるために必要なものです。

 脚側でぴったりと人の横について歩くことができなくとも、リードで飼主を引きずったり、お散歩中の様々な刺激に暴走したりすることがなければ、犬も飼主もとても楽しく歩くことができるはずです。お客様が来た時にわんわんと吠えていたり、うなり声を上げたりしなければ、別におすわりでお出迎えする必要もないでしょう。飛びつきや吠えつきを「オスワリ」、「マテ」、「フセ」...と号令で防止することもできるでしょうが、他人が近づいてくるたびに号令を連発しなくても「普通」にしていられる犬を育てる方が、人間ははるかに楽な生活を送れるのです。「マテ」ができなくてもクレートの中で静かに落ち着いていられれば、緊急災害時などはとても助かります。

 競技会などで入賞することができても、毛玉を取ったり、足を拭いたりする度に暴れたり、うなったり、かみついたりする犬との日常生活はとても大変でしょう。自分の子がどんなにすごい芸ができるかを自慢する人よりも、イライラせず、対立のない日常生活を犬と送れるように努力する人の方が、良質の飼主さんであることは間違いありません。

しつけの専門家選びとその方針の理解も飼い主の責任

 もう一つ付け加えなければならないのが、トレーニング方法に関することです。動物(人間も...)は学習理論に基づいて物事を学びます。それを無視するような方法で犬に何かを教えることは、虐待になりかねません。それがどのようなものであるかを知ってから訓練をしなければなりませんし、同時に、専門家に任せるのであれば、その人がこのような理論を取得しているかどうかを確かめるのが飼主の責任でしょう。自分の子の教育をお任せするのであれば、学校や先生をしっかりと選ぶのは親の役目です。

 いくら素人であっても、飼主は教育環境や先生の教育方針に納得する必要があります。知らないから言えない、のではなく、知らなくても「疑問は疑問」、何か変だ、嫌だ、と思ったら、その気持に対して正直に確認するべきなのです。

犬との外出——見栄と危険

 生活と社会活動に関しては、その範囲がとても広いことは言うまでもありません。その中で幾つか考えなければならないことを挙げてみましょう。
 まず一つは、「愛犬に洋服は必要?」という点です。最近はかわいらしい服を売っているペットショップがとても増えました。別に悪いことではないのでしょうが、本来、動物の体は体毛で保護されています。その上にさらに何かをかぶせてしまうことで、暑い、動きにくい、窮屈だ...という思いを犬にさせている飼主もいるのではないかと考えてしまいます。飼主の自己満足のために「かわいくさせられている」犬達を見ると、何かがおかしいと思わざるを得ません。毛が散らばって周囲に迷惑をかけるのでは、という気持ちで服を利用されている飼い主さんもおられます。例えば優良家庭犬普及協会の犬たちの場合、施設の中に入るときには、シャツなどを着せるようにしているようです。ただし屋内外を問わずいつでも服を着せたままだと、過熱しやすい体のことを考えれば、暖かい日などは犬にとって辛いかもしれません。

 また、いつも一緒であることが良い飼主である、と思われがちですが、犬にしてみればお留守番の方が良い、ということもあるでしょう。夏の海辺の砂は、靴をはかぬ犬にとってはとても熱いのです。暑い季節のイベントや人込みは、犬にとっては苦痛です。おしゃれなショッピング・センターなどに犬を連れてくるのは何故? 見せびらかしたいから? 犬はキョロキョロ、ハアハア...とても疲れている様子です。さらには犬を外につないだままで、店などに入っている人もいます。近づいた人にかみつく、逆に他人に傷つけられる、倒れた自転車の下じきになる、誘拐される...周囲には危険がたくさんあります。実際に盗まれてしまい、自分の犬に二度と会えぬことになった飼主さんもいます。何気ない生活活動の中にはこのようにとんでもないものもあるのです。

愛犬の目に映る"あなた"はどんな飼主ですか?

 良い飼主さん達が、実はとても自分の犬を苦しめていることや、自分の犬を危険な目に遭わせていることは他にもたくさんあるようです。世の愛犬家の方々は、今一度自分の胸に手をあてて、「私は大丈夫?」と自問自答してみましょう。

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