人と動物の関係学

[2011年6月] ペット・ロス #01

ペットロスと災害の現場


震災の中で多くの動物たちも人間同様命を落としました。
しかし、人間の命があまりにも多く奪われてしまった現場においてはその動物たちの命について語る事さえはばかられる様な雰囲気があったのではないでしょうか。

むろん人命優先という概念に反対するわけでもありませんし、動物は全てにおいて人間同様の権利を与えられるべきだと言うつもりもありません。しかし被災地で巡回診療や動物救済に奔走されておられる獣医師の先生方の体験をいくつか聞かせて頂いた中で、ペットを失った飼い主さんの気持ちに思いをはせるようになりました。
獣医師の先生方は多くの場合、自らも被災者でありながら震災直後から一生懸命動物たちの為に尽くしてこられました。預かったり、治療をしたりと様々なニーズにこたえなければならなかったのです。


飼主が前に進む為に・・・必要なことは?

 しかしその中で思いもよらない仕事が一つあったのです。それはペットを失った飼い主さんたちの気持ちを支えることでした。
ある先生は巡回診療先の避難所で自分の病院の患者である犬の飼い主一家を目にしたそうです。その時犬は見当たらなかったのでもしかしたら・・・と思い、なかなか声をかけることが出来なかったのです。しかし向こうから獣医師のもとへ挨拶に訪れ、実は犬を助けることが出来なかったと涙ながらに話されたそうです。
被災地には多くの悲劇の物語が存在します。全ての人が何かを失っている中で犬、猫、ウサギ、小鳥等の話をしたくても出来ない人が大勢いるのでしょう。世間一般から見れば喪失体験の度合いは極めて軽いと言われてしまうかも知れません。
しかし動物と一緒に生活をしてきた者にとって、彼らの存在はとても、とても大切なものなのです。かけがいのない命なのです。そしてそれを失うということは心がえぐられるような体験であり苦しい思いに苛まれるのです。
このような体験を乗り越えるために誰かにに話を聞いてもらうことはとても大切なことだと思います。ペットロスのホットライン等を運営している団体もあるようですが、これらはまずは相手の話をじっくり聞くことなのです。
時間や環境に左右されず気兼ねなく自分の動物を失ったことの悲しさやその死にまつわる様々な事柄などを全て吐き出すことで傷が癒されるのです。
しかし今回の震災のような多くの人間が命を落としている現場においてはそれをしたくても出来ない飼い主さんが沢山おられます。自分たちは後回しで当然だと自らも考えてしまっているかも知れません。
でもそうではありません。今後の生活にしっかりと立ち向かっていく為には、今その思いを心の底に追いやってしまわない事だと思います。

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