人と動物の関係学

[2011年3月] 幸せな食物 #01

幸せとおいしさ

鶏の幸せ=人間の味覚に訴える魅力

今、食肉の世界では国産の銘柄が安い輸入肉と戦っています。私たち消費者にとっては、安いものは大変魅力的でもあります。しかし、価格以外に考えなければならないことも沢山あるのではないでしょうか。
例えば、卵の質は鶏の生活状況によって随分と変わります。一般的にスーパーなどで売られている卵は大量生産の養鶏場で生産されているものですが、このような場所では鶏はバタリーケージという飼育設備の中に入れられています。生みはじめから卵が生めなくなるまで、一生狭いケージの中で過ごします。
バタリーケージ自体はあまり消費者の目に触れることはないのですが、関心のある方はぜひ一度ご自分の目で飼育環境を見ていただきたいと思います。
確かに温度や湿度の管理、換気など色々近代的な設備が揃っている施設も沢山あります。しかし狭い空間で足の裏はいつも網、地面を踏むことも太陽を浴びることもなく生きていくのは生き物にとって一体どのようなことなのであろうと考えさせられてしまいます。
しかし鶏の福祉を考えるよりも人間の生活の方が大切であるという方も大勢います。その考え方を否定するつもりもありません。でも卵を比べてください。殻の硬さ、黄身の弾力、どれをとっても自由に歩き回ることができる鶏が生んだ卵の方が遥かにしっかりとしています。手にとって割ってみれば誰にでもわかる違いがそこにはあるのです。鶏の幸せと人間の味覚に訴える魅力とは、実はイコールで結ぶことができる事柄なのです。

動物の幸せと食べ物のつながりを考えてみませんか?

ある県では、今流行りの銘柄豚肉の有名な生産者がおられます。そこの生産者は効率重視の大規模養豚に疑問を持ち、放牧養豚を試してみたのです。大規模養豚では豚一頭当たりの空間は1平方メートル余ですが、この生産者の場合は2ヘクタール強に約50頭という生産体制をとっています。杉などを伐採した後の山の斜面に電気柵などを用いて豚を放牧しています。豚は、小屋に置かれた専用の餌も食べるのですが、それに加え斜面の草を食べ豚の自然の行動である土を鼻先でかきわけるという行動をします。また、放牧地はしばらくすると糞尿で肥えた土地に生まれ変わります。生産者は柵を移動させて肥沃な土地に植林をするのです。斜面にはクヌギや果樹などを植え、耕作地で放牧をした場合は、その後麦などの畑を作るそうです。
狭いところで飼育された豚は時にはストレスで他の豚の尻尾にかみついてしまうことがあります。そのため子豚の時に尻尾を切っておくことが普通とされています。しかし放牧されている豚の尻尾は自然のままです。
豚にとってはどちらが好ましいのでしょう。どちらが「幸せ」なのでしょう?
この生産者の豚肉を常時使っているあるレストランのシェフは「幸せに育った豚はおいしい」と語っています。
茨城県で、鶏を自由に動き回れる平飼いで卵の生産にあたっているある生産者は「穏やかに暮らす鶏の卵は生きのいい味がする」と語っていました。
さて皆様は動物の福祉とよい食べ物のつながりをどのように考えますか?

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