人と動物の関係学

[2010年10月] 動物と社会 #04

進化する獣医療

家族の一員であるペットの為に

近年、ペットたちの医療最前線は、めまぐるしく進化しております。
特に獣医療の技術が最先端にあるともいわれている米国では、動物の医療にまだ人間の医療として認められていないものまでが活用されています。

今、米国には約7千7百万頭の犬と9千万匹の猫が飼われています。一般家庭のペット飼育率をみると全世帯数の約6割強が、何らかの動物を飼育しているようです。犬の飼い主の85パーセント、そして猫の飼い主の78パーセントは犬も猫も家族の一員であると認めています。
その様な中で、ペットたちの健康維持の為、各家庭では多額の支出がなされているようです。

動物の命の大きさ

ニューヨークのアニマル・メディカル・センターは、動物病院でありながら非営利の研究教育機関でもありますが、同病院では一昔前では考えられなかったような心臓外科手術やMRI,超音波診断などが日常的に行われています。
最近では最新の高速3-D画像診断用のスキャナーが導入されました。
これは最愛のペットの命を救ってくれたこの病院に対する寄付として、ある裕福な飼い主から寄贈されたものなのです。
それだけ動物たちの命は人々にとって大きな意味を持つようになってきました。

アニマル・メディカル・センターには2000年のノーベル賞の受賞者でもある神経科学者のグリーンガード博士の愛犬のバーニーズも治療に通っています。毎週2回博士と腰の悪い愛犬のアルファは病院を訪れレーザー治療、及び温熱療法を受けさらには水中トレッドミルで運動をして帰ります。

獣医療の進化と、ワン・メディシンの概念

昨年、米国全体では総額120億ドルの獣医療に対する支出があったそうです。これは10年前の国民全体の獣医療支出の約2倍です。

今米国における人間の医療問題はかなり深刻になっています。健康保険がないために十分な医療を受けられない市民の数は想像を絶するものです。その様な社会状況の中でペットたちの医療にこれだけお金が掛けられているということは少々皮肉なことなのかもしれません。
しかしそれだけペットたちの存在が人間たちにとって大きなものになってきているということの証拠でもあるのでしょう。

また、もう一つ動物の先端医療の面白い側面が最近クローズ・アップされつつあります。
それは、まだ人間に対する医療技術として認可が下りていないものの応用です。例えば前述のアニマル・メディカル・センターでは動物の関節炎などの治療に幹細胞の移植を行います。この技術は、まだ人間に使用することが許可されていません。しかしここでは有効な治療手段の一つとなっています。ちなみにコストは約4000ドルだそうです。
またウィスコンシン大学の獣医学部では、犬の膝のじん帯の修復に用いられた技術があまりにも効果的であった為、現在はそれがプロのアメリカンフットボールの選手等の手術にも応用され始めています。

近年人間と動物の健康の関連性が強調されOne Medicine(ワン・メディシン)という概念が世界に広まりつつあります。このような技術の進歩をみると、これもワン・メディシンの一部なのかもしれないと思う今日この頃です。

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