人と動物の関係学

[2011年11月] 動物と社会 #10

畜産と自然保護


最近ネパールの禿鷹が絶滅の危機に瀕しています。周囲の人間による畜産の方法が彼らにとって有害であることがその理由の一つです。20世紀にはまだ30万羽の禿鷹がネパールの上空を飛んでいたようですが、この何年の間にその9割が死滅してしまったということです。
その主たる理由は有害物質の摂取です。ネパールでは、牛にしばしば鎮痛剤であるジクロフェナクを使用していますが、この薬剤が禿鷹にとって有害であることが知られています。高齢の牛などの死骸がネパールの禿鷹の主食の一つであることから、この物質がかなり高い確率で野性の禿鷹の体内に取り込まれてしまうのです。
この薬剤を摂取すると禿鷹は数日のうちに、早い時にはその日のうちに、腎不全を起こし死んでしまうそうです。そして禿鷹たちが死滅してしまうと多くの家畜の死骸が放置状態となり野犬が集まってくるようになるのです。その結果として狂犬病が流行しはじめる危険も高まります。

野鳥保護の会「BCN」の取り組み

そのためネパールの野鳥保護の会「BCN」は、その対策に熱心に取り組み始めたのです。
ネパールには6種の禿鷹が生息していますがそのうち3種は絶滅危惧品種とされています。またこのジクロフェナク問題は東南アジアの禿鷹全体の現象の理由でもあると言われています。
特にヒンズー教の信者が多い地域においては、聖なる動物である牛の屠殺は禁じられており、牛は全て高齢による自然死を迎えるのです。その為、鎮痛薬などの投与が晩年は必要になってきます。
この問題に対処するためにネパールでは4年前から禿鷹用の「レストラン」を設置してきました。BCNが、高齢で死が間近であろうと思われる牛を、飼い主から買い取り、それを地域共有の山林内の農場に連れて行き飼育をするのです。この間必要とあれば禿鷹に対する毒性がない鎮痛薬などが牛の管理に使用されます。この農場で自然死した牛の死骸は皮を剥がれ再度ジクロフェナクが肉に入っていないことが確認された後に、近隣のジャングルの中の「レストラン」に置かれるのです。現在ネパールには6軒のレストランが設置されており、一番新しいものが設置されたカスキ地区では初めは食餌に訪れる禿鷹が50羽しか観測されなかったことに比べ、今では250羽以上が観察されています。どのレストラン周辺でも数10羽しかいなかったものが200羽以上来るようになったとの報告がされているようです。
実はこの様な試みは、ヨーロッパやアフリカ南部の各地でも実施されているのですが、外部の専門家主導ではなく、地域の活動として始まったものであることから、このネパールのプロジェクトはユニークであると言われています。

自然界のつながりを理解することが大切

それにしても人間が特定の動物にとって良かれと思ってやったことが、とんでもない結果を他の動物にもたらしてしまうとは。。。。
自然界のつながりを理解することがいかに大切かを改めて感じる今日この頃です。

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