人と動物の関係学

[2012年2月] 動物と社会 #11

メディアの中の動物

テレビに登場する動物たち・・・あなたはどう思いますか?

最近、日本でもコマーシャルや様々な番組に多種多様な動物たちが登場しています。これを可愛い、面白い、又は腹立たしいと思うかは人それぞれでしょう。しかし、やはり行きすぎた動物の活用には少しずつブレーキをかける様な動きが出てきています。
例えば、有名なチンパンジーが登場する番組に対して、環境省や動物園水族館協会が注意をしたことが何年か前にあったことは、多くの方々が新聞等で読まれていることでしょう。
絶滅危惧種のチンパンジーの扱いに、やや問題があったようです。本来繁殖目的とされていた個体が連続でテレビに出演していることの問題が指摘されたのです。しかし、このように公に問題が指摘されずしても「何か変・・・」と思われるような動物の登場の仕方は多いように感じられます。

コマ―シャルの影響は計り知れないものです

さて、このような問題に対して今米国では大きな動きがあるのです。
アメリカン・フットボールが国技の如く人々の注目を集める米国で、かの有名なスーパーボール中にオンエアされるキャリアビルダー・ドットコム社のコマーシャルには2005年以来、毎年チンパンジーが起用されています。毎年何らかの形でチンパン君たちが人間をだましたり笑い物にしたり、という流れでコマーシャルが作成されているようですが、今年はネクタイとスーツに身を固めたチンパンジーが人間の「同僚」をだまして喜ぶという筋書きが用意されているそうです。
これに対してシカゴ市のリンカーン・パーク動物園が放映中止を呼びかけるキャンペーンを始めました。
絶滅危惧種であるチンパンジーを保護しなければならないという気持ちを、社会が持ちにくくなる、チンパンジーという動物が軽視されるようになる、そしてチンパンジーが起用されればされる程、この動物が「売れる」という間違った意識を原産国の住民に植え付けるようにもなる、というのが動物園側の言い分です。
また、今年はノ―スキャロライナ州にあるデユーク大学の研究者たちの報告も新たなる武器になっています。
キャリアビルダー社はどのような形で登場させようとチンパンジーを露出させることが保護にもつながると言っているのですが、同大学の研究者、ヘア博士によると擬人化した姿は人間の自然保護に対する態度にマイナスの影響を与えると結論付けています。
スーパーボール自体が全世界で放映される為、このコマーシャルの効果は決して無視できるものではありません。
現在のチンパンジーの数は以前の100万頭以上から近年約10万頭にまで減少していると言われています。前述したチンパンジーは「売れる」と原産国の人たちが考えてしまうことの危険性はまさに深刻なものなのです。

以前から感じていた「違和感」がついに具体的なもに

企業側では、撮影現場には動物愛護団体の査察も入り、動物が虐待されていないことが保証されていると反論していますが、今回の反対運動はむしろこの様な次元にとどまるものではありません。動物の登場のさせ方自体、描写そのものに問題があるというより根本的な指摘なのです。
動物のことを真剣に考える人々にとっては、恐らく以前から感じていた違和感がついに具体的な運動と化したというところでしょうか。まずはこのキャンペーンにエールを送りながらそのいく末を見守ってみたいと思うのです。

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