人と動物の関係学

[2012年5月] 動物と社会 #13

省エネ、環境問題、そして動物

エネルギー源の世界情勢

最近原子力発電が大きな社会問題となっています。2011年3月の震災以降原発の存続をどうするのか、やめるべきなのか等々多くの議論が飛び交っています。このような社会状況の中、次世代のエネルギー源の開発や省エネ対策等も着々と進められているのです。
そのような試みの中に太陽光・熱発電の推進が含まれています。クリーンなエネルギーとして今まさに注目を浴びているこの技術ですが、日本だけではなく各国でも同様の開発が進められています。その中で一つ気になる記事を目にしました。それは米国における大規模太陽熱発電施設にまつわるものでした。
米国西海岸のカリフォルニア州では、広大な砂漠の地域を利用してソーラーパワーを有効活用するための施設の建設が複数進められています。米国も化石燃料への過度の依存から脱却するためにいろいろな計画を立てているのでしょう。しかし、これらの建設作業の過程において思わぬ障壁が現われてしまったのです。

モハビ砂漠のリクガメ

ある会社が太陽光発電所の建設現場として選択したモハビ砂漠には、国が絶滅危惧種に指定しているリクガメが生息しているのです。カリフォルニア州は、一応建設を認めたもののこのカメを守るために厳しい条件を企業に課したのです。カメの事故などによる死亡に対し、まず上限が設けられました。年間許される死亡個体数は3頭以内、もし、それを超えてしまったら、建設は中止しなければならないことになります。また、施設建設の敷地内に入ってしまったカメの移動に関しては、年間で認められるのは38頭のみなのです。
このような条件をつけられてしまった企業は膨大な支出をし、敷地をフェンスで囲ったり、生物学的調査を実施するための専門家を雇ったりしたのですが、最近になって更に大きな困難に見舞われてしまいました。それは、実際のリクガメの生息数が予測を上回るものであったという事実です。実際の個体数では、上記の州政府によって設けられた条件に従うことが非常に難しいことが発覚してしまったのです。そのおかげで同社の建設作業は、今のところ中断したままの状態となっているようです。

生のジレンマ

さてさてどうしたものでしょう・・・。クリーンなエネルギーは環境のため、そして絶滅危惧種を保護することも環境のため、どちらを立てればよいのやら、人間にとっては大きなジレンマです。しかし、このような問題は意外に多いようです。東南アジアのオラウータンにまつわる問題もとても似ています。環境に良いとされて需要が高まっているヤシ油を生産するためにヤシ農園の開発が進むとアジア最大の霊長類であり絶滅危惧種であるオラウータンの生息地が奪われていきます。また、ヤシの芽を食するオラウータンを害獣扱いし、殺してしまう農園労働者もいるようです。巷では、オーガニック・ショップ等でヤシ油から生産された石鹸やその他の商品が「エコ」として売られています。
でももしかしたら、そのために絶滅危惧種のオラウータンがどんどんと追いつめられているのかもしれません。どちらを選べばよいのでしょう?
答えは一つではありません。人間一人一人が考えて自分なりの落とし所を見つけなければならないのでしょう。しっかりとした哲学を持って生きるということは、実につらいことなのです。でも、人間もそろそろこのような「生のジレンマ」と真剣に向き合ってもよいのではないでしょうか。

このページのトップへ